こんにちは,@kuri8iveです.修士課程が失敗に終わったので,なぜそうなったかとどうすればよかったかを書きます.反省文です.
本稿における「失敗」の定義
先日の記事 kuri8ive.hatenablog.com でも書いたように,元々D進も見据えつつの修士進学だったということもあり,「海外D進用奨学金の最初の締め切りラッシュがある & 国内D進の試験(夏)がある夏頃までに査読付き国際会議論文採択1本以上」を目標にしていました.しかし,修論を出した今になっても投稿すら出来ていないという惨状であることから,清々しいほどに「失敗」です.(ここではその定義の良し悪し等については議論しません.)
なお,失敗だったからといって修士進学を後悔しているわけではありません.得たものも多くあると思っています.ただただ,自分の至らなかった点を整理して今後の人生で活かすために見つめ直している次第です.
なぜ失敗したか
失敗要因と自身で認識していることについて書きます.
取り組み時間の絶対的な少なさ
そのまんまです.他のいろんな失敗も取り組み時間がもっと多かったらどうにかなっていたものも多いかと思っています.コツコツ取り組むことができず,かなりムラがありました.大学生ながいこと見ていてしみじみ思う。毎日こつこつやれるメンタルが20歳くらいで身についてる連中はどこに行っても成功する。簡単そうだが、本当に難しい、最上位の能力である。ちょこっとアタマが良いとか器用とか、むしろ悪影響
— し (@KintaroOfficial) 2021年1月18日
実装力・デバッグ能力の欠如
とにかく実装力・デバッグ能力がなく,バグが取れなかったり意図したものを生成できていなかったり,実装面で詰まることが多すぎました.もちろん実装も研究の一部分ではあると思うのですが,アイデアの検証等ではなく思った通りの挙動をしないことへの対応にリソースが割かれすぎてしまい,メンタル的にも辛かったです.何をしてるんだろう,という.
指導教員の活用不足
(博士課程にいたわけではありませんが)こちらのツイートは全くその通りだと思います.私の失敗は,意味のある多様なxを継続的に入力できなかったことです.先生は研究会でもその他の時でも素早く的確なf(x)を返してくださっていたため,もっとxをアクティブに入力していればと思わずにはいられません.博士課程における指導教官というのは、xを入力したらf(x)を返してくれる関数なので、何も入力しなければ何も出てこないのは当然で、アクティブに良い入力をすることが大事(と私は勝手に思ってる)。
— yudai.jl (@physics303) 2022年1月18日
メンタルヘルスマネジメントの失敗
(↑ツイートの煮詰まるは行き詰まるの意味で使われているものとして書きますが)研究が行き詰まった時の逃げ場やリフレッシュ方法(というよりは気持ちの割り切り?)を確立できなかったのも一因だと思っています.ゲームをしたり動画を見たりしていても,「進捗出せていないのに何してんの?」という内なる囁きが聞こえてきてしまい,息抜きしているはずなのにしっかりリラックスできないという状態になることが多々ありました.修士の人は、大体1つ程度は共同研究に参加してもらうか、あるいは後輩の面倒を見てもらって、複数の研究を同時にやってもらっている。一つだけだと煮詰まると逃げ場がないし、複数やった方が(大変かと思っていたが)大変そうに見えて往々にして本人の能力が上がり、どちらも成果が出る気がしている。
— Mamoru Komachi (@mamoruk) 2021年12月29日
集中力のなさ
文字通りです.作業BGMとして流していた動画に気を取られてしまったり,作業中に来たメール対応をしてしまったり,集中力に欠ける場面があったことは否定できません.
どうすればよかったか
どうすれば失敗せずに済んだか,思いつくことを記します.
時間の使い方を明確にする
時間の少なさ・集中力のなさに対応します.研究の時間はそれ以外の全てをブロックする,といったように時間の使い方を明確にしていれば良かったなと思います.研究室にはほぼ毎日通っていたのでそのことも利用できたかもしれません.例えば研究室にいる間は機内モードにする,特定の位置の時に指定のWebサイトへのアクセスを不可にするサービス(確かこのようなものがあった気がします)を使う,といったことを習慣にしていればだいぶ変わったかもしれません.
初期に使い方をガッツリ覚える
実装力の欠如に対応します.研究でお世話になるものの使い方を初期にしっかり覚えておけば,もっと時間を有効活用できたんじゃないかと思います.例えばPyTorchのtensor周りについて,都度調べるより一旦まとまった時間を確保して頭に入れておけばその後の作業効率を改善できたのではないかという気持ちがあります.
意識的に接点を増やす
メンタルヘルスマネジメントの失敗に対応します.もっと接点を持っておけば良かったです.オンラインでもいいので趣味のコミュニティを探して入ってみる,興味のある技術のSlack等に参加してみる,がパッと思いつくものです.実際には交友関係が狭い上に,コロナ禍ということもあり人との交流が(少なくともオフラインでは)大幅に減り,研究室や内定先以外の人とは交流がない期間が長くありました.もっと自分の心のケアに向き合う必要があったと思います.一定程度までの社会的相互作用は幸福度を向上させるらしいですし,孤独の負の影響を踏まえて行動しておくべきでした. pubmed.ncbi.nlm.nih.govメンタル強そうに見える人ってただ依存先を1つにせず分散してるだけなんだよね。家族仕事恋人友人知人、数あるコミュニティに程良く属したり、一人で完結する趣味を持ってるから極端に落ちてアホみたいに病んだりしない。1つに依存して人生捧げたらそりゃあその軸がブレた瞬間メンタル崩壊するだろな
— あたりめ (@a_tarime_) 2020年1月25日
代替タスクを用意する
時間の少なさ・メンタルヘルスマネジメントの失敗に対応します.最優先タスクがなかなか進まない時に,息抜きがてら代わりに進めるタスクでも予め用意しておけばよかったなと思います.もし実装に詰まっていたとしても,関連研究を探して論文を読んでみたりその時点で書ける部分の内容を執筆してみたりすることは,実装とは独立に進められるはずです.
成果目標以外にプロセス目標を立てる
メンタルヘルスマネジメントの失敗に対応します.研究というものが不確実性を持つ以上,論文投稿は(半人前の研究者見習いには)どちらかというと成果目標だと考えます.そのため,私のように上手くいかない期間が続くと一向に目標が達成されないという事態は容易に起こり得るはずです.そこで,週に論文を○本読むといったプロセス目標も用意していれば良かったなと思いました.頑張ってはいるけれど全く目標に達しない,が続くよりは,目指す成果そのものではなくとも何かしら日々達成しているしちゃんと前進しているよ,というメッセージを脳にフィードバックしていれば良かったです.研究活動をする→達成感が得られる,のような前向きな紐付けが必要でした.(上手くいっている場合は自然と得られるかと思います.)前ツイートでAndrew Ngが「成果目標と同時にプロセス目標を立てると良い」と書いていて、成果目標は様々な要因で達成できないこともあるけど、「自分がやりさえすれば出来る」プロセス目標はモチベ保ちつつ成果に近づくのを助けてくれると思うので、新年の目標立てる際など参考にしてほしい☺
— べいえりあ🌙🌙🌙 (@mr_bay_area) 2022年1月2日
目標を分割する
メンタルヘルスマネジメントの失敗に対応します.前項目と近い話ですが,小さく分割した目標も設定していれば良かったです.達成感を得やすいことがポジティブに働くからか,当初の目標値を半分にした方がそうでない場合より63%成功できたという話もあるみたいですし.と思ったのですが,進捗報告資料を見返すと一時期までは月の目標を設定していました.ふわっとしていたのでより具体的な小目標にする,達成したなら一旦ちゃんと満足する(?)といった点が足りていなかったのかもしれません. nextbigideaclub.com
進捗報告の型を作ってそれに従う
研究の進捗報告で意識するといいこと
— 森野キートス (@ki1tos) 2020年11月18日
・やったことを説明する前に、何が知りたくてやったのか言う
・方法の説明は、有名な方法との違いを言うとわかりやすいし勉強になる
・結果を説明する前に、どんな結果になると予想してたか言う
・データを見せたら、その解釈を言う
指導教員の活用不足に対応します.↑で言及があったように,指導教員にアクティブに良い入力をすることが研究を進める上では大切です.そこで,こういった内容が共有されれば次のアクションについて議論しやすいな,と言えるような項目を整理して,毎回その型に従って進捗報告をしていれば良かったかもしれません.同じ進捗であっても,複数の観点からの見方を提示したり次の想定アクションと予想される結果を付言したりといったことができていれば,聞く側もより協力しやすかったはずです.研究室でのミーティングでは明確な『協力要請』が非常に大切です。「何にどう困っているか」「今何が必要か」を説明して、助けてもらえる可能性を高めましょう。要請がないと、周りは助けたくてもうまく助けられないのです。#研究の攻略 pic.twitter.com/3JbacUeW6w
— 石原尚 / Android Robotics (@hisashi_is) 2021年12月6日
おわりに
俺の屍を越えていけ.